ブレイキングバッド【シーズン1・2話】のネタバレ解説&感想、キャスト、あらすじをまとめています!
文字通りネタバレ解説&感想なので、まだ内容を知りたくない方は1.2のキャストとあらすじだけ確認して本編を御覧ください。
また独自の着眼点に基づいた解説や感想になっているので、共感する部分や見解が異なる部分が混合してあるかと思いますが、純粋にそれらの一致や差異を楽しんでいただけたら幸いです!
※前話のネタバレ解説&感想からチェックしたい方はこちらからどうぞ。
【ブレイキングバッド・シーズン1・1話】ネタバレ解説&感想!
ブレイキングバッド【シーズン1・2話】のキャスト
ブレイキングバッド【シーズン1・2話】の主なキャストは5人です。
ウォルター・ホワイト
高校の化学教師。妻・スカイラーと子供・フリンを持つ一家の主。年齢は50歳。高校の教師の給料だけでは生活費が足らず、授業後に洗車屋でレジのアルバイトをしていたが、1話の中で退職をしてしまう。ジェシー・ピンクマンと共にクリスタルメスの製造販売をする。
スカイラー・ホワイト
ウォルターの妻。子供が一人。お腹に子供を宿している。マリーの姉。年齢は39歳。小説家志望。ウォルターが性に積極的になったこと、朝帰りしてきたこと、バスルームで気絶するように寝込んでいたことから、疑いの目を向けている。
ジェシー・ピンクマン
ジャンキー。麻薬の売人。ウォルターの元教え子。ウォルターとパートナー関係を結び、クリスタルメスの製造販売をする。
クレイジー・エイト
麻薬の卸売業者。タンピコ家具店の社長の息子。エミリオのいとこ。ウォルターを脅してレシピを聞こうとするも、神経ガスを吸わされ監禁される。
エミリオ・コヤマ
クレイジー・エイトのいとこ。ウォルターの神経ガスにより死亡。
ブレイキングバッド【シーズン1・2話】のあらすじ
クリスタルメスの販売に失敗したウォルター・ホワイトとジェシー・ピンクマン。二人がクレイジー・エイトとエミリオ・コヤマがぐったりと床に横たわるキャンピングカーを運転している最中に、クレイジーエイトだけ息を吹きかえしてしまう。車を一旦、ピンクマンの駐車場に置いて、死体とクレイジーエイトをどう処理するのか、話し合うもなかなか決まらず頭を抱えることに。結局、ウォルターの考えで死体は強力な酸で溶かすことになり、クレイジーエイトは始末することになった。厳正なコインの表裏の判決により、ウォルターがクレイジーエイトの始末を、ピンクマンが死体の処理をすることに。しかしウォルターは逡巡して手を下すことがなかなかできない。ピンクマンもイライラしながらもことをなかなか進められない。最終的にピンクマンは死体を溶かすことになるも、これが大きな失敗を招くことになる。一方、二人が泥沼に入り込んでいくほど、スカイラーのウォルターに対する不審はどんどん深まっていく。彼女はウォルターがピンクマンと会っていることも掴んでいた。エコー検査をし終わった病室で、スカイラーは溜まった不信感を表に出して、ウォルターを問い詰めていく。
ここから先はネタバレを含んだ独自の解説や感想になります。
本編を見る前に内容を知るのは嫌だ!と言う方は、本編をご覧になってからここから先をお読みください。
ブレイキングバッド【シーズン1・2話】のネタバレ解説
個人的に、ブレイキングバッド【シーズン1・2話】の解説(ネタバレ込み)ポイントは2つあります!
※あくまで独自の解説です。
- キラル分子の説明をするウォルターが、それと比喩的に重なる自分の変化を自覚していない
- ウォルターとピンクマンの結合が想像を超えた悪い化学変化をもたらしている
キラル分子の変化を説明するウォルターが、それと比喩的に重なる自分の変化を自覚していない
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シーズン1・2話の中では、ウォルターが高校の化学の授業中、キラル分子について説明するシーンがありました。
キラル分子とは右手と左手のように対となる関係を持つ分子のことを指します。
形はよく似ているが、重なり合うことはない。同じように見えるが、同じ働きをするわけではない。
例えば、サリドマイドという化合物でみると、キラル分子R体は妊娠のつわりを和らげる効果がありますが、キラル分子S体を服用すると、障害を持った胎児が生まれることが分かっているそうです。
見た目が同じでも、それぞれを服用したあとの変化は良い方面、悪い方面にはっきり別れます。
これって考えてみると、ウォオルターの変化を比喩的に説明しているようにも思えます。
サリドマイドにとってのキラル分子S体が、ウォルターにとってのクリスタルメスともとれます。
また、そもそもキラル分子の対関係が、ウォルターの性格の2面性を暗喩しているようにもとれます。
いずれにせよ、ここで重要なのはキラル分子の2面的構造や変化の危険性を説明しているウォルター自身が、サリドマイドのキラル分子S体を服用した人体のように、悪い方面に変化していることに気が付いていない、という点です。
化学のスペシャリストでありながら、自分に起こっている化学的なる変化に無自覚な点に物語の深さを感じます。
ウォルターとピンクマンの結合が想像を超えた悪い化学変化をもたらしている
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シーズン1・1話(前回)で、ウォルターは化学とは変化を学ぶ学問だと授業中に説明しています。
元素と元素が結合し、あるいは分離することで化学変化をもたらす。
これはウォルターとピンクマンの関係性にも置き換えることができます。
ウォルターは肺ガンを宣告されて余命残りわずかだとわかると、家族のためにお金を残すため、クリスタルメスの製造に手を染めます。しかしウォルターにあるのは化学知識に基づいた最良のレシピのみ。販売路はありません。そこで販売路を持つピンクマンと協力してビジネスを行うことにします。ピンクマンにとっても最良のメスが多額の現金収入をもたらしてくれるのでありがたい。
家族に残すのに十分な金額を一気に稼いで足を洗おう。そう考えるウォルターは「ピンクマンの持つ販売経路+自分の最良のメス=多額の収入」という公式のみを想像して、深刻な問題は起きることなく事は進んでいくとたかをくくっていました。
しかし実際にピンクマンと協力してみると、問題がたくさん起きます。クレイジーエイトたちに銃で殺されそうになり、神経ガスで殺害までしてしまう。フッ化水素を入れたバスタブの底が溶けてエミリオの血肉が床一面にびしゃっと広がり血まみれに。ウォルターが不可解な行動を重ねて、スカイラーの不審をかう。挙句の果てには、ピンクマンが荒野に置き忘れたガスマスクを子どもたちに拾われてしまう。
結局、ウォルターが想像していた単純な成り行きから大きくハズレて、問題山積みの進路に突入することになります。
そして、その進路に大きく舵を切ったのはピンクマンと結びついてからです。ウォルターはピンクマンと協力する(結合する)ことで、ピンクマンの持つ「人格、周囲環境、それらがもたらす効果」を引き受けることになります。それがウォルターの持つ「人格、周囲環境、それらがもたらす効果」と相成って、今のところ悪い化学変化を起こすことになっています。
ブレイキングバッド【シーズン1・2話】のネタバレ感想!
ブレイキングバッド【シーズン1・2話】を視聴してみて、個人的にここが好きだなと思う場面が2つありました!
※あくまで個人的な感想です。
- ウォルターがクレイジーエイトに水以外にも必要物資を渡すシーン
- 検査室でスカイラーに詰め寄られた後のウォルターの表情
ウォルターがクレイジーエイトに水以外にも必要物資を渡すシーン
ウォルターはクレイジーエイトになかなか手を下すことができずに逡巡します。その逡巡している様子がシーズン1・2話では細かく描写されています。僕が思い出しうる限りで、ウォルターの逡巡が伺えるのは
- ピンクマンとクレイジーエイトの処理について話し合っているときに、事情を話せばクレイジーエイトにも分かってもらえるのではないかと取り乱しながら持ちかけるシーン
- ピンクマンと大声を出して責任をなすりつけあっているシーン
- 自分の意志ではなく、コインの判断にクレイジーエイトの処理の采配を任せるシーン
- マリファナを吸うシーン(紙一枚になかなか巻けず、二枚つかって巻く)
- 凶器を選ぶためにいろんなものを手にとっては首を振るシーン
- いざ手を下そうと地下に降りるもクレイジーエイトが意識を取り戻してすぐ階段を駆け上がって逃げるシーン
と結構綿密にあります。
これらの細かいシーンの積み重ねがウォルターの神経質で、弱気で、まだ善意のある性格をよく表しています。
そしてその性格がよく表れているからこそ、ウォルターの逡巡にリアルさが出てきます。
逡巡にリアルさが出るからこそ、人を一人殺すってなったらそれはここまでためらうよな、という納得感を僕は持つことができるんだなと感じるんです。
結局ウォルターは手を下すことができず、クレイジーエイトの要求に応えて水を渡します。水だけではなく、サンドイッチ、トイレ用のバケツ、トイレットペーパー、手の消毒液を距離の離れたところから地面に滑らせて渡します。
しばらくは生かすつもりでいることを暫定的に決めたわけです。そこで僕はホッとするわけです。
“リアルに”逡巡しているウォルターが”わずかでも善意を見せる”決断を下したから、ウォルターに対してまだ悪の方へ完全に傾いてはないなと安心感を得ることになります。
そしてますますウォルターの今度の動向が気になってくるんです。
しかもこのシーン、一つひとつの物がカメラの外からクレイジーエイトの足元に滑り込んでくるようなカメラワークなのでとてもコミカルですよね。ころころ転がってくるトイレットペーパーはくすっと笑ってしまいます。
そういうところも相まってこのシーンが好きです。
検査室でスカイラーに詰め寄られた後のウォルターの表情
シーズン1・2話では、エコー検査室でスカイラーが募った不信感をウォルターにぶつけて説明を求めます。
電話の相手が元教え子でジェンキーのピンクマンであることも知っているわよ。昨日は夜中に帰ってきて、バスタブで朝まで寝てたし。ここまで不可解なことがあったら説明するべきでしょ?ジェシーって一体誰なの?と。
ここでウォルターは彼からマリファナを買ったと嘘を付きます。
それに対してスカイラーは気は確かなの?とさらに言葉をまくしたて責め続けますが、この時のウォルターの態度や表情の変化が好きなんです。(好きというと少し語弊があるかもしれませんが。)
ウォルターはスカイラーに近づきながら、最近自分自身を見失っていること、でも家族への愛は変わらず持っていることを真摯な表情で語ります。これに対してスカイラーはちゃんと聞こうと耳を傾けています。
しかしそこでウォルターは”だけど”という逆説を使って転調して、私のために今はとにかくほっといてほしい、干渉しないでほしい、ひとりにしてほしい、できるね?とあからさまに作り笑いを浮かべて高圧的にスカイラーを説き伏せようとします。
これにはスカイラーもびっくり。言葉を失います。
ただ、僕は募った苛立ちを押し隠すために、できるだけ陽気さを装おうとしながらもうまくできず、一方的に要求を押し付けようとする傲慢さがにじみ出てしまっている心模様がウォルターの表情にうまく表現されているのが好きなんです。
こういう難しい感情表現をうまくこなすブライアン・クランストンの演技力に感服します。
