ブレイキングバッド【シーズン2・10話】のウォルターの行動に不可解な点が多かったので、徹底解説したいと思います!
ブレイキングバッド【シーズン2・10話】の感想、あらすじ、キャストについてのネタバレも含んだ内容になっています。
また独自の解説や感想のため、共感する部分や見解が異なる部分が混合してあるかと思いますが、純粋に一致や差異を楽しんでいただけたら幸いです!
※前話のネタバレ解説&感想からチェックしたい方はこちらからどうぞ。
ブレイキングバッド【シーズン2・10話】のキャスト
ブレイキングバッド【シーズン2・10話】の主なキャストは7人です。
※前話までのそれぞれのキャストの行動も簡単に書いています。
ウォルター・ホワイト
高校の化学教師。妻・スカイラーと子供・フリンを持つ一家の主。年齢は50歳。寿命が残り僅かだと早とちりして、ジェシーとともにクリスタルメスを大量生産する。しかしガンはむしろ寛解して、苛立ちをあらわにする。
スカイラー・ホワイト
ウォルターの妻。子供が一人。お腹に子供を宿している。マリーの姉。年齢は39歳。テッドと徐々に親密になっていく。
ホワイト・Jr
ウォルターとスカイラーの子。父ウォルターの勤める学校に通う学生。年齢は16歳。脳性麻痺による軽度の言語症と運動障害を抱えている。足が不自由で松葉杖を使う。授業に復帰したウォルターと行き帰り一緒に車に乗る。
ハンク・シュレイダー
ウォルターの義理の弟。マリーの夫。DEA(麻薬取締局)のエージェント。バッジャーの証言をもとに、ハイゼンベルクを捕まえるが、何か違和感を覚えている。
ジェシー・ピンクマン
ジャンキー。麻薬の売人。ウォルターの元教え子で麻薬ビジネスのパートナー。ウォルターと共に荒野に4日間居座り、クリスタルメスを製造する。ジェーンと恋仲になる。
ジェーン
ジェシーが新しく借りる賃貸の管理人。ジェシーの隣に住む。ジェシーと一夜を共にして恋仲となる。
テッド・ベネキー
スカイラーが以前就職していた会社の社長。事情を考慮し、スカイラーを経理に復職させる。
ブレイキングバッド【シーズン2・10話】のあらすじ
ブレイキングバッド【シーズン2・10話】のあらすじを確認しましょう。
ガンが寛解したウォルター・ホワイトは麻薬ビジネスから足を洗おうとする。しかしスカイラーが企画した寛解を祝福するパーティでは、ハンクに喧嘩を売って場の雰囲気を悪くする。そのことに反省したウォルターは、家の給水タンクの取替え、腐食した床材の張替えに没頭したように従事して家族の信頼を回復しようと試みるも、スカイラーとジュニアの表情にはかえってクエッションマークがつくことになる。今回ばかりはビジネスの引き際だと判断したウォルターであったが、次第に麻薬ビジネスへと引き戻されていく。
その頃、ジェシーはジェーンとの濃密な時間を思う存分楽しんでいた。しかし、ジェーンの父親に自分のことを紹介してくれないジェーンに対して不満を強めていくことになる。
ここから先はネタバレを含んだ独自の解説や感想になります。
本編を見る前に内容を知るのは嫌だ!と言う方は、本編をご覧になってからここから先をお読みください。
ブレイキングバッド【シーズン2・10話】ウォルターの行動を徹底解説!(ネタバレ感想)
ブレイキングバッド【シーズン2・10話】のウォルターの行動を徹底解説したいと思います。(ネタバレ感想込み)
※あくまで独自の解説です。
- 自責の念と家族の絆の回復のために足を洗う決断をする
- でも本音では家族のためにお金を残して誇りを胸に死にたかった
- 麻薬ビジネスで実感した自分の影響力が縄張り意識を増長している
- 反省して父親として全うであろうとする
- 結局、”多大な影響力を発揮できる”麻薬ビジネスを手放せない
自責の念と家族の絆の回復のために足を洗う決断をする
寛解から死期が延びて、イライラしながらも考えた末に、足を洗うことに決めたウォルターはジェシーにそう伝えます。
死期が短く、すぐ死ぬことができれば今製造したメスを売りさばいて家族に大量のお金を残して死ねる。
家族のために、という立派な動機を達成して誇りを持って死ねるわけです。
これでもう面倒なことは何もなくなる、と。
しかし死期が延びると、現実面が大きく見えてきます。
クリスタルメスの製造に手を染めたこと、エミリオやクレイジーエイトを殺害したこと、トゥコのアジトを爆発させたことなど、自分が犯した多くの犯罪や招いた多くのトラブルはなかったことにはできないだけに、自責の念がふつふつと湧いてくるでしょう。
そして、それらのことを正直に語れないウォルターは家族に嘘をつき、家族を何度も失望させました。
家族のまとまりは解けていく一方です。
これからもクリスタルメスの製造を続けていけば、同じことが繰り返されてやがては家族を失ってしまうだろう。
しかも寛解のニュースを受けて、家族の気持ちは一つにまとまろうとしています。
だからウォルターはここでもう一度、家族の絆を回復するために、麻薬ビジネスから足を洗おうと判断します。
でも本音では家族のためにお金を残して誇りを胸に死にたかった
引用元:Youtube公式チャンネル「Breaking Bad & Better Call Saul」※スピーチで本音を言うウォルター
そうは言っても、まだウォルターの中には苛立ちがあります。
というのも、寛解を祝福するパーティのスピーチで下のようなことを言っていました。
はじめガンと診断された時に最初に浮かんだ言葉はなぜ私が?だった。
今回、ガンが寛解したと診断された時に最初に浮かんだ言葉も同じだった。なぜ私が?
これには周りの人も理解できず、一瞬表情を固まらせます。
要するにウォルターは、自分の犯した現実の問題を抱えて生きていくことよりも、家族のためにお金を残して誇りを胸に死ぬことの方を望んでいたんですね。
麻薬ビジネスで実感した自分の影響力が縄張り意識を増長している
引用元:Youtube公式チャンネル「Breaking Bad & Better Call Saul」※コップに何杯も酒を注ぐウォルター
パーティの中盤、庭のテーブルでウォルターとハンクがジュニアを挟んで談笑しているシーンがあります。
ハンクは、トゥルトゥーガの生首が亀の上に乗っていたことを、取るに足らない、むしろ手の込んだ演出だと言わんばかりに陽気にジュニアに話しています。
実際はひどく傷つけられたにも関わらず、です。
その話をジュニアは興味深そうに聞いています。
ジュニアの顔はウォルターには向かず、常にハンクに向いています。
そこでウォルターは16歳のジュニアのコップにウイスキーを注ぎます。何かの抑制が切れたように、何杯も無理にお酒を飲まして、ハンクが手で蓋をしても上から流し込む始末です。
引用元:Youtube公式チャンネル「Breaking Bad & Better Call Saul」※ウォルターを注意するハンク
ハンクは陽気に装い、ボトルをもぎ取るとそのまま室内に帰ろうとしますが、ウォルターは睨みをきかせながらまるで脅すように言います。
ボトルも戻せ。ボトルを持ってこい。
(席を立ち、ハンクにじりじりと近寄る)
私の家で父親は私だ。
そして飲みすぎたジュニアがプールに吐いてしまい、トラブルに気づいたスカイラーがジュニアの背中をさすりに入っていきます。
引用元:Youtube公式チャンネル「Breaking Bad & Better Call Saul」※吐くジュニア
するとウォルターは席に座って、満足気に薄気味悪い笑みを浮かべます。
これまでの麻薬ビジネスを通じて、ウォルターは
- 自分の作るクリスタルメスは唯一無二の純度の高さを誇る
- 自分の能力が最大限に発揮されて市場に多大な影響を及ぼしている
- しかも家族のために40万以上の大金を稼いで残せる男だ
と認識しています。
つまり、自分は”多大な影響力を持つ”上に”尊敬される父親である”と。
しかし庭のテーブルの談笑を見て、
- ハンクはエルパソの一件で心を病むほど恐怖心を持っていた
- にも関わらず、取るに足らない演出だと犯罪者を侮るように話していた
- ジュニアはそんなハンクの着飾った勇敢な話を尊敬の眼差しで聞いている
と心の中で思うわけです。
つまり、ハンクの方がまるで”多大な影響力を持つ”上に”尊敬される父親である”ように振る舞っているな、と。
言い換えれば、私はまるで”愚かな犯罪者に過ぎず”、”息子に見向きもされない父親である”と言われているように思うわけです。
自分の影響力と父親としての役割をおびやかされたウォルターは、それを誇示するためにハンクに突っかかっていくのです。
ここは私の家で、私が父親で、私が影響力を持つのだ、と。
ジュニアが吐いた時に笑ったのは、自分の影響力を思い知らせることができたことに満足したからでしょう。
麻薬ビジネスを通じて肌身に感じた自分の影響力の大きさが縄張り意識を増長しているのです。
反省して父親として全うであろうとする
引用元:Youtube公式チャンネル「Breaking Bad & Better Call Saul」※床材を修理するウォルター
しかしウォルターはこの一連の出来事を反省します。
ハンクに突っかかったことを忘れるためにも、頭の中にわずかでも麻薬ビジネス(により作られた自己像)を浮かべないようにするためにも、身の回りの家のことに従事して父親としての役割を全うしようと本能的に思ったのでしょう。
給水タンクが故障しているのを見て、すぐ買い替えて自分で設置をします。
それだけにとどまらず、床材の腐食を目ざとく見つけて、すぐに大量の材料と工具を買い集めて修復に入ります。
ウォルターは生真面目で観察眼を持つ注意深い性格です。さらに化学者なので物質の変化に詳しいです。
そういうウォルターだからこそ、「家族のために父親の役割を全うする」という考えが、「給水タンクの故障や床材の腐食を修復する」という専門的な行動に帰結します。とても不器用ですね。
引用元:Youtube公式チャンネル「Breaking Bad & Better Call Saul」※ウォルターの行動を理解できない2人
しかしスカイラーとジュニアはまるで大工事のように大げさに床の修理に入るウォルターを理解できません。
ウォルターはそんな2人の様子にはお構いなしに、まるで過去の自分から逃げるようにして家の修復に心血を注いでいきます。
結局、”多大な影響力を発揮できる”麻薬ビジネスを手放せない
引用元:Youtube公式チャンネル「Breaking Bad & Better Call Saul」※ジャンキーにアドバイスするウォルター
ホームセンターで床の修理のための材料を買っている時に、ウォルターは1つのカゴに目がとまります。
そこには麻薬の製造に必要な材料が所狭しと置いてあります。
ウォルターはそのカゴの中に材料を入れ込むジャンキーに向かって、そのマッチではない、1つの場所ですべての材料を買い込むな、材料ごとに店舗を変えろ、などのアドバイスを急にまくし立てます。
引用元:Youtube公式チャンネル「Breaking Bad & Better Call Saul」※ウォルターにビビるジャンキー
それにビビったジャンキーはカゴを置き去りにして逃げていきます。
ウォルターは全く分かっておらんといった感じに首を横にふると、そのままレジに並びます。
しかし数分後、さっきの出来事から何か刺激をもらったウォルターは急に商品を戻し、外に出てジャンキーたちのもとへ駆け寄って言い渡します。
引用元:Youtube公式チャンネル「Breaking Bad & Better Call Saul」
俺のシマから出ていけ。
ウォルターは、パーティの庭で表に出てきた恐ろしい自分がしたことの反省から身の回りのことで父親としての役割を全うしようと、家の修復作業に取り組んできました。
修復作業に従事しているときは頭の中に麻薬ビジネスをしている時の自分のことを思い出さなかったでしょう。
しかしホームセンターで麻薬の材料を集めるジャンキーと話した時に、遠ざけていた麻薬ビジネスの記憶が一気に頭の中に蘇ります。
自分の製造するクリスタルメスは最良のものであること、一気に販売網を広げて大金を稼いだこと、そして麻薬ビジネスを通じて実感できた自分の影響力の大きさを思い出します。
私が家の修復などに従事している間に、さっきのジャンキーみたいな何も分かっていないやつらが質の悪い麻薬を手に、私の築き上げた販売網を侵していく、私が与えてきた市場への影響力を損なっていく、それは許せない。
というような想いがレジに並んでいる間に頭の中を駆け巡ったことでしょう。
そのようにして自分の縄張り意識を最大限に高めた結果、俺のシマから出ていけ、というセリフを言い渡すことになるのです。
ウォルターは結局のところ、父親として全うすることだけでは満足することができず、多大な影響力を発揮できる麻薬ビジネスを手放すことができないんですね。
10話のウォルターの行動は今までよりさらに不可解な点が多かったので、見る人によって抱く感想は様々でしょうが、僕はウォルターの一連の行動をこう読みました。
