『詩』第四弾!貧しい言葉、あずまや

詩を載っけます!

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「詩」貧しい言葉

僕が愛について語る時、

君は僕に「憎しみを恐れているんだね」と言った

僕が正義について語る時

君は僕に「誤りを恐れているんだね」と言った

僕が世界について語る時

君は僕に「孤独を恐れているんだね」と言った

僕が言葉について語る時

君は僕に「沈黙を恐れているんだね」と言った

そして僕が語るべき言葉を失った時

君は僕に「貧しさに怯えてるんだね」と言った

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「詩」あずまや

日曜日の朝、僕は家の近くにある公園に歩いていった。角がささくれた木製のベンチが一つ、4本の柱に支えられた屋根の下で、ぽつんと佇んでいた。そのベンチに座ってみると、目前に広がる泉と馬が吸水してるように垂れる枝葉が豊かな意味を含んだ情景に見えた。僕は目を閉じた。小鳥がどこかから指でつつくように鳴き、風が緩やかに吹き抜けて、後ろを並ぶ通り道では時折人の足跡と会話がなぜか心地よく聞こえていた。

僕はその時とても穏やかな気持ちになっていた。

月曜日の夜、僕は仕事終わりにまたそのベンチに座った。疲れているせいか思わず後ろに背中を預けようと思ったが、支えてくれる背もたれがないことに気付き、腰に力を入れた。目前に広がる泉は薄暗闇の中にそっと身を潜め、水面に映る月を緩やかに揺らしていた。昨日は馬が吸水してるように見えた枝葉は今日は前足に顎を埋め目を閉じてるように見えた。後ろの通りから若いカップルがその泉の縁に歩いてきて立ち止まった。男の左腕は女の腰に回され、女の頭は男の左肩に傾けられていた。

「キスをしてもいい?」

「誰か見てるかもよ」

「誰もいないさ」

男は女にキスをした。それから男は女の服を少し脱がしはじめた。それは朝起きて歯を磨くくらい自然な行為にみえた。

僕はその時とてもロマンティックになっていた。

水曜日の昼休みに、僕はまたあのベンチに腰をかけた。僕の隣にはすでにおばあちゃんが1人着物に帯を締めて泉を向いて座っていた。僕が近づいて隣に座るまでの間、彼女は身動き一つとらず前方を見続けていた。泉の縁に広がる草の上にシートを引いて弁当箱の中身をつついている家族連れがあちこちに見られた。子供たちはフリスビーをしたり、お互いを追いかけあったり、身をかがめ草の下にある何かにジッと目を見据えたりしていた。陽気で楽しげな声があちこちで飛び交っていた。太陽が高々と空に佇み、水面にきらびやかに揺れる光の道を作り上げていた。おばあちゃんの視線はその光の道に向けられているようだった。あるいは、何も見ていなかったのかもしれない。

「不思議なものね、生き続けるというのは」

おばあちゃんは口だけを動かすようにそう呟いた(ように僕には聞こえた)

僕はその時ノスタルジックになっていた。

 

それから5年が経って再びこの公園に来た。

しかしそこにはアパートが建っていた。

 

そのアパートを眺めながら僕はあの3日間のことをこうして思い出している。

そして僕は少しだけ自分のことを理解した。

 

あずまやだ。

僕は踵を返し歩みを進めてもう一度言葉にした。

あずまやだ。

僕のアイデンティティはあそこにあったんだ。

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